NPO特定非営利活動法人 徳育と人間力育成研究所
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「推薦のことば」

しかま
 
四竃 正夫 (東海大学名誉教授)
 
1941年、東京生まれ、哲学者。元東海大学教授。
名古屋大学文学部哲学科卒業
東京教育大学大学院文学研究科哲学専攻修士課程修了。

  西洋の人々にとって最も大切な書物が「聖書」であるとすれば、東洋の私たちにとってのそれは、まさに「論語」でありましょう。「論語」は、古代中国の哲学者孔子および弟子たちの言行録です。それは、いつの時代にも通用する大切な人生の知恵の書として広く読まれてきました。ごく古い時代に日本に入り、日本人に計り知れない影響を与えました。それは、仏教とともに、日本人の心の本質をつくってきたと言っても過言ではないでしょう。人々は、時にこの書から遠ざかりましたが、今また戻ってきました。昨今の「論語ブーム」には隔世の感があります。
 そういうなか、動きの鈍い公教育に先んじて、私学・私塾界が、「論語」を始めとする古今東西の善き書により、将来を担う子どもたちの教育の根幹に心の教育を据えようとされるのは、誠に素晴らしいことであります。子どもたちの学力の向上を図り、学習・受験に対処する力を与えるという大切な仕事に加えて、それを深いところで支える心の教育を取り入れることの意義深さは計り知れません。
 これで、日本は救われます。なぜなら、こうした私学・私塾に学んだ子どもたちが、二十年後、三十年後、国の中核を担うとき、彼らはこの国を、本当に世界に誇れる立派な国にしてくれるでしょうから。
 以上を鑑みるとき、このNPO法人の企ては、真に意義ある仕事であると言わざるを得ません。ここに責任をもって推薦する次第であります。

『論語』が説く八つの徳目
孔子の教えの基本である「思い遣り」です。
「思い遣り」とは、通常は自分のところにある「思い」を、他人のところに「遣って」、その人の身になって考えたり感じたりすることです。そこに、本当の親切、愛情が生まれることでしょう。
「正義」、「正しいことをすること」です。
何が正しいことかの議論ももっともですが、だからといって、「正義」が存在しないわけではありません。人々の心から、とくに子どもたちの心から、「正義」の心がなくなったら、この世は闇です。
「文明社会の美しい秩序の表現」です。
秩序があってこそ、人と人との関係も円滑にいくにちがいありません。それは決して、自由・平等と矛盾するものではありません。いやむしろ、それらに品位を与えるものと言えましょう。
「正しいことと正しくないこととを見分ける心」です。それができるために、私たちは、なるべく客観的に物事を見るように努めましょう。そして、さらに大切なことですが、なるべく私利私欲を離れて物事を見るように努めましょう。
「まごころ」、「誠実さ」、「自分の心の真ん中にある良い心に対する誠実さ」です。「忠」は、封建社会では主君に対するものと理解されましたが、もともとの孔子の教えでは、「良い心」に対する誠実さであり、現代にも通用するものです。
「信義」、「信頼」、「信用」、「人と社会とをつなぐもの」です。これがなければ、どんなに素晴らしい能力を持っていても、それを生かすことはできません。社会との接点がないからです。企業が信用第一を謳うのも、このためです。
苦労をいとわず自分を生み育ててくれた親の深い愛に思いを致し、「感謝しながら、親を大切にしていくこと」です。むろん、親自身は、自分の私心を捨てて子に真実の愛情を注ぐ親、子に大切にされるに値する親でなければなりません。
「兄弟が仲良いこと」です。兄は兄らしく、弟は弟らしく、愛し合うことです。
「孝」と「悌」とを備えた、温かな愛情にあふれた家庭から、広く他の人を愛せる「仁」の人が生まれ、温かな社会、立派な国がつくられていくのです。